管楽器について
 管楽器は長い筒で、息を吹き込んで音を出すという事は誰でも分かります。しかし、音を出す方法は
楽器によって全く違いますし、演奏上の体への負担、苦労の内容も異なります。音色、表現力も異なり
ますし、面白い事に楽器ごとに演奏する人の性格もはっきり分かれます。これは、そういう性格の人が
その楽器を好むという事もあるでしょうし、その楽器をずっとやっている内にそういう性格になって行くと
いう面もあると思います。私が観察する限りでは後者の影響の方が強いと思っています。
どの楽器を選ぶかはあなたの今後の人生をも左右します??? 

木管と金管の二種類あります。

(木管楽器)  フルート、サックスは木管楽器に分類されます。
木管楽器の特徴は、材質が木であるかどうかではなく、次の事が上げられます。
1、楽器自体が音を発している。
2、音階を決める穴が並んでいて、穴の開閉により音階を作る。
3、演奏者の体力的な負担は少ない。
4、簡単な旋律を吹くことは短期間に習得出来る。
5、音色が優しい。



(金管楽器)
1、音を発しているのは楽器ではなく、奏者の唇の振動により音を発する。
2、管に穴は無く、ピストン、スライドバルブにより管の長さ(空気の筒)を変えられる
  構造になっている。それぞれの長さに対して倍音の原理により7個以上の音程の
  選択が出来る。それは唇の振動数を変える事と、風圧を変える事によりにより選択する。
  選択がうまくいかないと違う音程を発したり、又は音そのものが出なかったりする。
3、演奏者の体力的な負担は大きい。特に最高音を発すると瞬間的に体力を消耗する。
4、簡単な旋律を吹くのに木管楽器の何十倍も習得期間を必要とする。
5、音が大きく、鋭く輝かしい音色が出る。

木管楽器は大きく分けて二種類あります

(気鳴楽器)
 これは狭い所に吹き込んだスピードのある息で管内部の空気を振動させて音を発する楽器です。
この音の発する一例として風が強い日に窓を少しだけ開けておくと笛のように音がします。
あれと同じです。窓を大きく開けると音はしなくなります。つまり、吹き込まれた風のスピードによる
低い気圧と内部の空気の気圧差で空気が振動を始めます。ですから、窓を大きく開けたり、風が
弱かったりすると、充分な気圧差が生じず音は発しなくなります。フルートを買ったものの音が出ない
と困っている人は気圧差が勝負だと思って下さい。余計分からないですかね・・
具体的な楽器としては

 フルート、リコーダー、オカリナ、トラベルソ(フルートの古楽器)等があります。
 
 これらの気鳴楽器を演奏する方達の特徴として、優しさがあります。動物に例えると羊のイメージです。
又、気鳴楽器は体の負担が少なく長時間演奏する事が可能で、細かい音符も器用にこなせます。

(リード楽器)
 葦で作られた、一見して竹のような薄い板を息の流れで振動させて音を出します。
振動の原理は気圧差とリードのバネの力です。リードの片面を吹き抜ける気圧の低い息に
リードが吸い寄せられますが、リードはバネの様に戻ろうとする力が働き反発して戻ります。
その繰り返しが細かい振動となり音になります。
具体的な楽器としては

 クラリネット、サックス、オーボエ、ファゴット等です。

 シングルリード 
  楽器の頭部のマウスピースに一枚のリードを取り付けて、マウスピースごと口にくわえ込み、
 息の流れと微妙な口の力加減で音色、音程をコントロールします。

   クラリネット、サックスがシングルリード楽器です。

 ダブルリード
  二枚を組み合わせたリードを直接口にくわえ込みます。演奏準備の時にリードに湿気と熱を
 与える為にリードを口にくわえていますが別に美味しくてしゃぶっているわけではありません。
 演奏に必要な準備作業なのです。

   オーボエ、ファゴットがダブルリード楽器です。

  ダブルリードは音量もあり更にその特徴のある音色の為、種類の違う複数の楽器が鳴っている
 時でも音が浮き立つ性質があります。オーボエは高音を、ファゴットは低音を受け持ちます。
 ダブルリードは、音は初心者でも出しやすいのですが、澄んだ柔らかい音を出すのが難しく、
 友人にチャルメラみたいだと言われないようにする為には長い年月とたゆまぬ研究が必要です。

  これらのリード楽器の特徴としては、演奏の為の楽器の準備(組み立て、リードのコンデション
 つくり)と後片付け(解体、湿気抜き)にかなりの時間を費やします。又、リードという部品が音を
 左右する為、良いリードを見つける為に命をかけます。特にダブルリード奏者は、自分でリードを
 作ってしまいます。しかし、残念ながらリードは消耗品ですので常に努力が必要です。

  これらリード楽器の方達の特徴としては、こだわり、緻密さです。当然ダブルリードの方が倍に
 なります。残念ながら動物の例は思い当たりません。気鳴楽器、リード楽器は、本体が金属、陶器
 プラスチックで出来ていても一般には木管楽器と呼ばれています。サックスも木管楽器ですが、
 音量があり、音色も派手な為ポピュラー方面で金管楽器と組む事が多いです。

  ハーモニカ、アコーデオン、オルガンは管楽器とは言いませんが、風でリード(この場合は金属製)を
 振動させて音を出すリード楽器です。


金管楽器の概念、特徴
 木管楽器は比較的素直に音が出せますし、練習量に応じて上達もします。それに対して金管楽器は
音がなかなか出ないだけでなく、練習量と上達は全く比例しない、時には反比例する厄介な楽器です。
そこで、金管楽器にについて少し解説をします。

  金管楽器を言葉通り金属製の楽器と思って始めると迷宮にはまり、上達しません。実体を楽器では
なく、唇奏音量拡大器、と理解すると上達も早まります。ですから、上達する為には楽器を操る事では
なく、声楽やスポーツと同様に自分自身のトレーニングという概念を持ち込むことが必要となります。
声楽は声帯を振動させるのに対して、金管楽器は唇を振動させます。前歯とマウスピースで唇を固定し、
唇の中央から息を吹き抜けさせ唇を振動させます。
 声楽を学ぶよりも厄介な問題は、この場合前歯の形状に極端に影響されるという事です。人よりもずば
抜けて早くスイスイ上達する人は決まって歯と唇が理想的な金管の為に生まれて来た人です。しかし、
殆どの人は日常生活には問題が無いのに金管には向かない欠点を抱えています。その度合いが強いと
残念ながら殆ど上達しません。実際には殆どの人が中位の何らかの欠点を抱えつつそれを克服する
努力をしています。顔が全員違うように歯や唇の形も全員違います。ですから、克服する内容、方法も
一人一人全員異なります。しかし、指導する側は歯と唇が恵まれている場合が多いので、苦労している
人の事情を実体験する事が出来ません。金管の指導が難しいのはそう言う状況があるからです。
上手な先輩に尋ねても適切なアドバイスを得られないのは先輩の知識不足ではないのです。

 音程をコントロールする方法としては、管の長さ(空気の筒)を変えることと、唇の振動数を変えて倍音を
選択する事により音程を選択します。同じ管(空気)の長さで、唇の振動数を変化させる事により、7個以上
の音程を選択する事が出来ます。高音域に入ると非常に細かく色々な音程が出ます。歌と同様で、どこま
で高い音が出せるかは演奏者の能力により1オクターブ以上の開きがあります。木管楽器のように指で
音程を選択する事は出来ません。素人にとっては実際に吹いてみないと何の音が出てくるのか分からない
のが実情です。声楽の場合は音程を外しても声は出ますが、金管の場合は倍音の特性に限定されている
ので必要な振動数を唇に与えられないと音は発しません。又、音が出ても、ミのつもりがドが出たりソが出て
しまったりします。特に高音域が極端に難しく、体操選手が着地が決まる時もあれば決まらない時もあります
がそれと似ています。しかし、金管は音がめちゃくちゃ目立ちますので、音楽の世界では決まったり決まらな
かったりは許されません。それが強いプレッシャーとなりますます唇の感覚が狂ったりします。

 ホルン
  カタツムリのようにぐるぐる丸まっています。音色はちょっとこもった様な深みのある柔らかい音で
 他の楽器とのアンサンブルで音が良く溶け込みます。作曲家は木管楽器のような役割を与え
 叙情的な旋律を吹かせます。室内楽では木管楽器と組む事が多いです。一般的に使われている
 楽器は調の違う二つの楽器を一本にしたような構造になっていて、譜読みの時も頭の中で難しい
 移調の作業を瞬時にしながら吹く場合が多いです。その為かホルン吹きは頭のよさそうな人が
 多いのが特徴です(テストをしたわけではないので実際には分からない)。主旋律を吹く事が少ない
 せいか、性格は控え目でかつ理知的で、紳士淑女が多い。
 (変った奏法)
 ホルンは先端のベルの中に手を入れていますが、あれは楽器を支える為だけではなく、音色を
作る為に手を入れています。ベルが急激に開き過ぎているのでそれを手で補っているのですが、
それならば最初からベルを絞って作れば良いのにと思うのは素人の発想です。自分の手を楽器の
一部とする事により自分だけの音色が作れるのです。

 

 トロンボーン
  トロンボーンは管の長さをスライドで伸び縮みさせて空気の筒の長さを変えられます。
 ですから歌や口笛と同様に無断階で音程を変える事も出来ます。しかし、選択した筒の
 長さと唇の振動数が一致しないと音は発しません。そして、便利なその機能が奏者により
 確実な音感を必要とします。又、スライドをポジション移動している間合いがありますので
 細かい音符は苦手となります。腕の長さが足りない人は紐を使い腕の長さを補います。
 音楽的な役割は主旋律の低音を支えたり、高音の主旋律を引き継いで、興奮している
 感情をなだめるような役割や、何かが始まる序奏の雰囲気作りをしたりします。
 トロンボーン吹きの性格は温和で社交的です。困った時はトロンボーンの人を誘うと協力
 してくれるでしょう。

 トランペット 
 
金管の中で高音域を受け持つトランペットは三つの問題があります。
一つ目は、高音域を吹いている為、必要な音程を求めるのに微細な体の変化で音程を
       選択するという難しさ。
二つ目は、高音を支える風圧を維持するのに疲労が激しい事。
三つ目は、素人にとって使える音域が非常に狭いという点です。プロですと三オクターブ位出せ
       ますが、初級、中級レベルの人ではその半分位の音域しか出せません。

 交響曲での音楽的な役割はとにかくクライマックスで劇的に登場します。トロンボーンとコンビを
組んで作曲家の激高を最高潮に表現します。
ベートーベンの時代のトランペットはピストンの機能が無く、メロディーが吹けませんでした。
ベルリオーズの時代になると金管楽器の機能が発達し、メロディーが吹けるようになり、金管楽器が
大活躍し、表現力が飛躍的に向上しました。ベートーベンの時代に金管の機能が発達していたら
ベートーベンの曲もきっと違ったものになっていたでしょう。

 トランペットの音楽的役割からトランペット吹きは目立ちたがりやで行動的と解釈されていますが
それは周囲の一方的な偏見です。本当はロマンチストです。又、ある本でトランペット吹きの性格を、
ふられてもクヨクヨしないあっけらかんとしてサバサバした人物として書いていましたが、それも誤解
です。トランペット吹きの一面として、自分の弱み、内面の奥深くを決して人に悟らせないポーカー
フェースの持ち主であるという事があります。
 又、トランペットは練習の努力と結果が一向に比例しない楽器ですので人の失敗には寛容です。
アンサンブルで他の楽器がとちっても決して嫌な顔はしませんし、その人をギトッと睨んだりする事は
ありません。

(余談1)
 音を的確に捉え易く、ミス音が出にくい楽器を吹いている人は、アンサンブルで人の失敗に対して
厳しい反応を示したりします。楽器が人の性格を形成する所以です。残念ながらその楽器が何である
かは公表する事は出来ません。しかし、アマオケ、プロオケとも共通の話のネタが伝わってきています。

(余談2)
 トランペットを吹いていると、強い風圧を作らないといけない為か気が強くなります。寛容と気が強く
なるという両面が備わりますので、いじめ問題で悩んでいる方はお子さんにトランペットを吹かせると
性格改善になります。加害者にも被害者にもならなくなります。

もう一つ原因不明のトランペット吹きの不思議な習性として、割り勘よりも驕る事を好むというのがあり
ます。トランペットを吹き過ぎて頭の中が興奮しているせいかも知れません。財布が薄くなってきたら
トランペットの人に飲みに連れて行ってもらいましょう。きっと驕ってくれます。


 コルネット
  見た目はトランペットと殆ど区別がつかない。分類上はホルンの仲間だが指導はトランペットの
 先生が行う。又、まだトランペットを吹く体力が無い小学生がコルネットを使ったりする。使う教材は
 トランペットと共通している。

 ユーフォニアム 
  あまり馴染みの無い楽器名だと思います。指導はトロンボーンの先生が指導します。
 ユーフォニアムとは・・

  1、管の長さの変更をスライドバルブではなくトランペットの様にピストンで行う
  2、音域、調はトロンボーンと同じ
  3、トロンボーンは直管ですが、ユーフォニアムは円錐管
  4、形はトランペットに似ているがトランペットよりも1オクターブ低い

 楽器の分類、すなわち音楽上の役割の違いは3番のホルンと同様に円錐管であるという事です。
響きが柔らかい為、主旋律を邪魔しないハーモニーの役割を受け持つのに適しています。
形はトランペットを4倍位に大きくした感じで、ベルを上に向けて持つ形になっています。
トランペットと同じピストンでB管(調)ですが、トランペットの先生が指導しない理由はマウス
ピースのサイズにあります。トランペットよりも1オクターブ低い為マウスピースが非常に大きく、
トロンボーンと同じサイズになります。従ってトロンボーンの先生が指導します。
金管は唇の振動で音を出す楽器ですので、専門の楽器の受け持ちは楽器の形ではなく、マウス
ピースのサイズで決まります。

 円錐管・・・管の直径が徐々に大きくなっていく構造。音が柔らかく他の楽器の音と融和する。
                           ホルン、フーフォニアム、チューバ、コルネット
 直管・・・・・管の基本部分の直径が同じになっている。音が鋭く他の楽器の響きに溶け込まない。
                           トランペット、トロンボーン

おまけの話
(色々なホルン)
フレンチホルン・・・一般的に一言でホルンと呼ばれている楽器
バセットホルン・・・クラリネットの仲間
フリューゲルホルン・・・トランペットと同じ調、音域で通常トランペット奏者が演奏する
イングリッシュホルン(コール・アングレ)・・・オーボエの仲間


(一枚リード楽器の音楽的な表現の自由度)
 演奏の疲労も少なく長時間吹けて、音色を変えたり、音を強くしたり弱くしたり又強くしたり、
細かい連譜も得意で、音域も広く、一番表現の幅が広いのは一枚のリードで演奏する楽器です。
具体的にはクラリネットで、ウインドオーケストラではバイオリンの役割を受け持ちます。敏感な
一枚のリードで音を出すので自由の幅が広いのですが、緊張で口の加減や、指の押さえ具合が
微妙に狂うと「ピヒャー」「キー」という奇声の連続になってしまいます。これがサックスも含めて一枚
リードの楽器の悩みの種です。

(気鳴楽器の弱点)
 空気だけで音を出すフルート等の楽器の思わぬ弱点はピアニシモが苦手という事です。空気と
空気の気圧差で音を出していて、リードの様な発振体を使っていない為、吹き込みを弱くすると音が
発っしなくなってしまいます。ですから、その人がフルートがどれだけ上手かは、如何に美しいピアニ
シモが出せるかでわかります。散漫な息ではなく一直線の一途な息を吹き込まないといけないわけ
です。フルートを吹く人が清純派に見えるのは、この吹奏法が関係しているのかもしれません?



 (管楽器の調について)
 実は音楽大学を出た方でも(管以外の方)、理解しにくいのが移調管楽器の楽譜と実音の
関係です。詳しく書くと余計に分からなくなるのがこの話です。めんどくさい人は読まなくていいです。
一般的に移調管楽器はクラリネット、サックス、トランペット等です。一般的に使われているフルート、
オーボエ等は移調管楽器ではありません。
例をあげると、ピアノ伴奏譜のついた歌の楽譜を移調管楽器で演奏するとピアノと全く音が合いません。
クラリネット用に書かれた楽譜でクラリネットを吹くとピアノと合います。しかし、その楽譜を見てフルートを
吹くとピアノと音が合いません。歌った場合もピアノと合いません。(合わないとは不協和音になるという事)

 管の人達は、B管、F管等と口にしますが、それはその楽器の開放音(基準音)の音を意味します。
開放とは弦で言えばどこも押えない開放弦の状態です。弦楽器は弦が複数ありますが、管楽器は
筒が一本ですから弦が一本と同じと思ってください。一番分かり易いのがC(ド)管です。
inCの楽譜をC管で吹くと楽譜通りの音が出てきます。記譜と実音が同じという事です。
inB♭の楽譜をB♭管で吹くと、ドの音符を吹いたときに一音低いシのフラットの実音が出てきます。
記譜と実音が違うわけです。ピアノ伴奏譜はinB♭の管楽器の楽譜の実音に合うように管楽器の
楽譜とは違う調で書いてあります。
歌の楽譜を移調管楽器で吹きピアノで伴奏してもらうと全く音が合いません。ピアノか管楽器のどちらかを
移調させなければ合いません。歌の楽譜は表示は省略してありますが当然inCで書いてあります。
ですから、この場合は理論上は管楽器を移調させれば良いわけです。しかし、それは管楽器奏者に
プロ級のレベルを求める事になります。そもそも、普通(歌やバイオリン)の楽譜を見て、B管でも実音の
ドの音が出せるわけです。B管のレを吹けば良いわけです。ですから、B管の人も楽譜をinCにしてレの
ポジションを最初からドだと思って身につければややこしくないのですが、それをすると余計にややこしく
なります。その話を書くとさらにややこしくなります。  

 楽譜の読み易さ、演奏のし易さからするとハ(C)長調が分かり易いわけです。ですから管楽器も
C管(その楽器の基準音がC)(Cはド)から作ったのではないかと思います。その管楽器の調を
変えるということは筒の長さを変える事になります。長さに合わせて筒(空気)の太さのバランスがあり
筒というトンネルを支える管楽器の材厚も絡んで、長さ(調)を変えると微妙に色合い(音色、響き)が
変ってきます。演奏家、楽器職人が美しい音、豊かな表現力を求めて試行錯誤し、又、各ポジションンの
音程の安定度を模索した結果その楽器の筒の長さ(調)が決まりました。そうするとその楽器の基準音を
C(ド)とする楽譜を作ると演奏が容易になります。そうしないと♯、♭が非常に多くなってしまいます。
又、その楽器の調によっては音符が五線からやたらとはみ出る位置にきてしまいます。その場合も
その楽器の基準音をCとする楽譜を作ると音符の位置が五線に納まり易くなります。そんな事情により
移調管楽器が誕生し、記譜と実音が違う移調管楽器の為の楽譜が存在しました。

 その管楽器の筒の長さの音(基準音)がラだとA管と言う事になり、その楽器の為の楽譜はinAと表示が
あり、その楽譜の記譜のドを吹くと楽器から出てくる実音はラが出てくるが、吹いている当人はドと読んでいる。
ですから、吹いている人が絶対音感の持ち主だと頭の中が大混乱を起こすわけです。絶対音感がない
人の方が移調管楽器は吹きやすいわけです。では、絶対音感があるプロが移調管楽器を始めた場合は
どうするかというと、絶対音感と相対音感の切り替えスイッチを頭の中に作り、スイッチで切り替えるられる
ようにします。しかし、周囲を見渡す限りは、この脳内スイッチの作成は十代が限度で、大人になってから
では難しくなるようです。

 作曲家は勿論ですが、指揮者も楽譜を見ながら記譜と実音の違いを瞬時に頭の中で移調し沢山ある
移調管楽器が同時に鳴る時も楽譜を読みながら頭の中では実音のハーモニーを響かせて指揮をして
いる訳です。

 同じ楽器、例えばトランペットでも色々な調の楽器があります。それぞれ管の長さが異なり音色、表現力
が異なります。得意とする音域も異なります。歌でいえば、ソプラノ、メゾソプラノ、アルトの違いだと思って
下さい。同じ曲の中で、同じ楽器で、調の違う複数の管楽器を使う場合があります。ところが作曲家の認識
不足でinEの後にinAを指示しておきながら、奏者に楽器の持ち替えの余裕(休符)を持たせないで曲を作って
しまう事があります。その場合、奏者は楽器を持ち替えずに頭の中で瞬間移調をして吹く事になります。
しかし管楽器の移調吹きはとても難しく、作曲家に書き直してくれと言いたいところですが、演奏家は皆さん
頑張って頭の中で瞬間移調をして吹いています。

 以上の話は説明をすると偉くややこしかったのですが、実際にクラリネットやサックス、トランペットを吹いている
人達にとっては簡単な話で難しくも何ともない話です。それは日本人にフランス語の話をすれば難しいですが、
フランス人にフランス語の話をすれば当たり前過ぎて退屈するのと同じことです。

 結論として、移調管楽器の人はその楽器専用の曲集を買いましょう。歌の楽譜やフルートの曲集を好きな
曲が入っているからと買うと、そのままでは使えません。自分の楽器用に移調した楽譜を書き直さないといけ
なくなりますし、又、非常に吹きづらい音域だったりします。